海苔があるかないかでしょ、って思った方はぜひ読んでみてください(笑)
今回は清水町『田中屋』さんにお話を伺ってきました。
地図ではここ↓
住所は板橋区清水町50-15です。
曙商店会の中にあり、最寄り駅は板橋本町駅。
お店に向かって左は、環七、板橋本町駅へと続きます。
その反対側はナショナルトレーニングセンター方面へ続きます。
田中屋三代目の齋藤さん夫婦にお話を伺いました。
田中屋のルーツ
― 「田中屋」って板橋区内でもいくつか見ますがどういう関係なんですか?
ご主人: 「田中屋のれん会」っていうのがあって、のれん会の”田中屋”は大山(川越街道沿い)と赤塚と長崎(豊島区)とうちの4店だけです。
本家の田中屋は昔赤羽にありました。今はないですけどね。
以前はのれん会の”田中屋”はもっとあったけど、後継者がいなくてどんどんなくなりました。
他にも「田中屋」っていうお蕎麦屋さんはあるけど、のれん会とは関係ないです。
― こちらの「田中屋」の初代が本家の田中屋で修業されたんですか?
奥さん: 2代目が修行にいきました。初代は和菓子職人になりたかったんだけど、戦前の時代では食べていけなくて蕎麦屋を始めたんです。
初代はちゃんと習ってないのが嫌で息子(2代目)を田中屋に習わせにいきました。
2代目と大山の田中屋さんとは同期だったみたいよ(笑)
― 2代目ってどちらのお父様なんですか?
奥さん: 2代目は私の父です。うちは女の子2人しか生まれなかった。
それで私と主人が継ぐことにしました。
― ご主人はもともと蕎麦に関わりがあったんですか?
ご主人: いや、やったことなかったです(笑)
脱サラして、2代目に習いました。
― 4代目はどうなんでしょう?
奥さん: いや~、ないね(笑)
自分たちの代で終わる覚悟でやってます。大事に大事に。
田中屋のお蕎麦ってどんな蕎麦?
― 「田中屋」の蕎麦の特徴ってなんですか?
奥さん: うちのつゆは濃いです。
辛いに甘いが入ってるのが特徴なんです。
何十年も継ぎ足し、継ぎ足しで作ってるんですよ。
神田やぶそばさん、砂場さんも、つゆの辛さでそれぞれの特徴があるんだよね。
― おつゆは本家の田中屋から受け継がれているものなんですか?
奥さん: いや、おつゆは命だから弟子にも渡さないよね。
― お店の歴史イコールつゆの歴史でもあるわけですね
奥さん: そうなのよ。
だから皆が濃い濃いって言うんだけど、そういうお店が美味しいんだから本来。
蕎麦が好きな人は老舗の濃いつゆにそばを先っぽの方しかつけないのよ。
今の人たちはじょぼってつけるでしょ。
― はい…。私はむしろ、じょぼじょぼつけます
奥さん: だから濃いと思う人が多いんだよね。
だってそばの食べ方が違うんだもん!
自分で調節して食べるものなんだよ。
― 普段はじょぼじょぼしても濃いとは思わないんですけど?
奥さん: 昔ながらの老舗の味が出せるお店が少数派になってきたから…。
だから濃いのをいろいろ言われちゃうんだよねー。
それはちょっと面白くないんだなぁ(笑)
― そばは毎日打ってるんですか?
ご主人: はい、毎朝打ってます。作り置きができないからね。
奥さん: 出しをとるのにカツオ節も毎日かいてるけど、それも毎日捨てます。
もったいないから取っておくことはしてないです。
― かつお節も毎日かくんですね
奥さん: 自分たちで洗って、蒸して、それを削っておつゆにしてるんだよ。
今は削ってもらってTパックでくるのもあるみたいだけど……うちはそういうことしない。
カツオ節のトゲささりながら自分たちでやってますよ(笑)
自分の目でみてカツオ節が悪ければ交換してもらうし。
― 手間がかかるんですね
奥さん: 自分の親から習ったこと、これしかないし、これが美味しいから変えたくないんです。
田中屋秘伝のつゆを見せてもらった
― 東日本大震災の時はおつゆは大丈夫だったんですか?
奥さん: 大丈夫でした(笑)
机の下に入ってるから、そうそう割れないよ。すごい大きな甕(かめ)です。
― どんな甕(かめ)なんですか?
奥さん: あ、見たい?(笑)
(見せてもらえることに!)
厨房の机の下から出てきたのがこちら↓
おお!初めて見た!
89年のお店の歴史そのものと聞いて震える…。
― 地震の時はまず甕(かめ)を守るみたいな感じですか?
奥さん: そうだね(笑)
甕をつくる職人さんがもういないから、割らないように割らないように。
つゆに熱が入らないようにそれ用の泥から作る特殊な甕なんです。
昔はけっこう職人さんがいたんだけど...。
「もりそば」と「ざるそば」の正しい違いわかりますか?
奥さん: 今の人って「もりそば」と「ざるそば」の違いがわからない人多いけど、わかります?(笑)
― 「ざるそば」って海苔がかかってるそばですよね?
奥さん: 同じつゆで海苔をかけてるだけの「ざる」は本来の「ざる」ではないのよ。
― え?違うんですか??
奥さん: 「もり」は蕎麦屋の顔だけど、「ざる」は濃いのよ。
今は分けて作ってるお店は少ないし、老舗でも「ざる」はださずに、「もり」だけで”せいろ”として出してるお店が多いしね。
田中屋の「ざる」は「もり」とは違うつゆって書いてある。
― たしかに「ざるそば」って海苔だけで割高だなって思ってました
奥さん: 知ってる人は「ざる」の海苔なしでくださいって人もいるのよ。
― 「ざるそば」ってどうやって作るんですか?
ご主人: おつゆは「もり」と一緒なんだけど、「ざる」にするのは【御膳(ごぜん)がえし】っていうまた別のかえし(つゆの元になるもの)を入れるんです。
― 「御膳がえし」が入るから「ざる」は濃い味になるんですね!?
奥さん: そう!
― ちなみに「御膳がえし」って何からできるんですか?
ご主人: 大本のつゆにいろいろな配合をして作ります。
実際に食べてみました!
おすすめセットメニュー。
季節メニュー。
店内のようす。
小上がり席もあるので、小さい子ども連れも安心。
お客さんの子どもの成長を見るのが楽しみらしく、ウェルカムみたいですよ。
今回はミニ天丼セット(930円)をチョイス。
ボリューム感もしっかりですね。
毎日打ってるというお蕎麦。
つやつやしています。
めっちゃコシが強い!
そばつゆが濃いので、ちょっとだけつけてすするという、俗にいう通の食べ方がキマる(笑)
天丼の色も他でみるより濃い気がします。
立派な海老が入ってます。
サクサクで美味しい!
老舗のつゆでいただく蕎麦湯は格別ですね。
満足感に満たされます...。
さいごに
ナショナルトレーニングセンターが近いことから、オリンピック選手たちがけっこう来るみたい。
やたら蕎麦に詳しい選手は田中屋の奥さんから教え込まれた可能性高いです(笑)
今は遠くに住んでる地元の方は、どうしても田中屋の味が食べたくなって駆け込んでくる方も多いのだとか。
なんかわかる気がします。
きっと3代目夫婦に会いたくなるのもあるんだろうなぁ。
4代目はないと断言していましたが、あと20年は頑張る!と言ってました。
こだわりの老舗そば屋さんがそこにある奇跡。
板橋っていいですね。
※齋藤さん、お忙しい中ご対応いただきありがとうございました!
田中屋
板橋区清水町50-15
営業時間: 11:00~15:00、17:00~20:30
定休日: 木曜
席数: 28席 (テーブル5卓20席、小上がり座敷2卓8席)
喫煙・禁煙: 喫煙可
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